コンテンツにスキップするには Enter キーを押してください

金融商品の選び方、実は“目的”でこんなに変わるんです

「資産運用を始めたいけど、金融商品が多すぎて何を選べばいいかわからない」。
これは、私がファイナンシャルプランナー(FP)として年間100件以上の相談を受ける中で、最も多く耳にするお悩みの一つです。

投資信託、株式、NISA、iDeCo…。
選択肢が豊富なのは良いことですが、かえって混乱し、第一歩が踏み出せなくなってしまう気持ちは、非常によく分かります。

しかし、ご安心ください。
金融商品選びには、実はたった一つ、揺るぎない「軸」が存在します。
それは、あなた自身の「目的」です。

この記事では、金融業界に17年携わってきたFPの視点から、複雑に見える金融商品を「目的」というシンプルな切り口で整理し、あなたに最適な選択肢を見つけるための具体的な方法を解説します。
もう商品選びで迷わないために、ぜひ最後までお付き合いください。

金融商品の基本的な特徴と分類

まず、すべての金融商品を理解するための「3つのものさし」をご紹介します。
それは「安全性」「収益性」「流動性」です。

安全性:預けたお金(元本)が減らないか。
収益性:どれくらいのリターン(利益)が期待できるか。
流動性:必要な時に、どれだけ早く現金化できるか。

残念ながら、これら3つすべてが満点の金融商品は存在しません。
安全性が高ければ収益性は低くなり、高い収益性を求めれば安全性は低くなる、というトレードオフの関係にあるのが基本です。

元本保証型 vs 非保証型:リスクとリターンの違い

この3つのものさしを基に、金融商品は大きく2つのタイプに分けられます。

  • 元本保証型:安全性を最優先したタイプ。銀行の預貯金などが代表例です。
  • 元本非保証型:収益性を重視したタイプ。投資信託や株式などが含まれます。元本が保証されない「リスク」がある代わりに、高い「リターン」が期待できます。

どちらが良い・悪いということではなく、あなたの「目的」に合わせて使い分けることが重要です。

商品の性格を決める「運用期間」「流動性」「税制メリット」

さらに、商品の性格を決める要素として「運用期間」「流動性」「税制メリット」があります。

例えば、老後資金のように「長期」で準備するお金なのか、数年後の車の購入資金のように「中期」で使うお金なのか。
また、いつでも引き出せる必要があるのか(流動性)、NISAやiDeCoのように税金が優遇される制度(税制メリット)を活用できるのか。
これらの要素が、商品選びの重要な判断材料となります。

よくある金融商品:預金・投資信託・株式・債券・保険の違い

ここで、代表的な金融商品の特徴を簡単に整理しておきましょう。

商品の種類特徴
預貯金安全性と流動性は高いが、超低金利のため収益性はほぼ期待できない。
投資信託運用のプロが複数の株式や債券に分散投資してくれるパッケージ商品。少額から始められ、リスク分散がしやすい。
株式企業の株を買い、値上がり益や配当金を狙う。大きなリターンが期待できる一方、価格変動リスクも大きい。
債券国や企業にお金を貸し、利息を受け取る仕組み。一般的に株式よりリスクは低いとされる。
保険万が一の保障機能がメインだが、貯蓄機能を持つ商品もある。ただし、手数料が割高な場合が多く注意が必要。

「目的」から考える金融商品の選び方

それでは、いよいよ本題です。
あなたの「目的」別に、どのような金融商品が適しているのかを見ていきましょう。

資産を“守りたい”人向け:安全性重視の選択肢

「とにかく元本を減らしたくない」「近い将来に使う予定が決まっている」という目的であれば、安全性と流動性を最優先すべきです。

  • 普通預金・定期預金:すぐに引き出せる安心感があります。生活防衛資金(万が一の備えとして生活費の3ヶ月〜1年分)の置き場所として最適です。
  • 個人向け国債(変動10年):国が発行するため安全性が高く、金利も0.05%が最低保証されています。1年以上経てば中途換金も可能です。

将来に“備えたい”人向け:中長期の資産形成商品

「10年以上先の教育資金」「漠然とした老後資金」など、長期的な視点で将来に備えるのが目的なら、時間を味方につけてコツコツ資産を育てていく考え方が有効です。

これは私のFP相談でもよくある質問ですが、「長期的な備え」には投資信託の積立投資が非常に適しています。
毎月一定額を買い続けることで、価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことができ、購入単価を平準化する効果(ドルコスト平均法)が期待できます。

特に、日経平均株価や米国のS&P500といった指数に連動する「インデックスファンド」は、手数料が安く、市場全体に分散投資できるため、初心者の方の資産形成のコアとしておすすめです。

“増やしたい”人向け:リスクを取る攻めの投資

「余裕資金の範囲で、積極的にお金を増やしたい」という目的であれば、ある程度のリスクを取って高いリターンを狙う選択肢も考えられます。

  • 株式投資:応援したい企業や、成長が期待できる企業の株を直接購入します。株価の値上がり益(キャピタルゲイン)や配当金(インカムゲイン)が主なリターンです。
  • アクティブファンド:インデックスファンドが市場平均を目指すのに対し、ファンドマネージャーが銘柄を厳選し、市場平均を上回るリターンを目指す投資信託です。その分、手数料は高くなる傾向があります。

ただし、これらは価格変動リスクも大きいため、あくまで生活に影響のない「余裕資金」で行うことが鉄則です。

“節税したい”人向け:NISA・iDeCoなど制度活用術

資産形成を行う上で、税金の負担を軽くすることは非常に重要です。
そのために国が用意してくれたお得な制度が「NISA」と「iDeCo」です。

  • NISA(少額投資非課税制度):通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内での利益には税金がかかりません。いつでも引き出し可能で自由度が高く、「備えたい」「増やしたい」どちらの目的にも活用できます。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):NISAと同様に運用益が非課税になる上、掛け金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。ただし、老後資金のための制度なので、原則60歳まで引き出すことはできません。

「節税」はそれ自体が目的というより、他の目的を効率よく達成するための強力なツールと捉えましょう。

ライフステージ別・金融商品活用の実例

目的別の考え方を、より具体的にイメージしてみましょう。

30代共働き夫婦:教育資金と将来資産形成のバランス

Aさんご夫婦(35歳、子ども1人)は、15年後の大学進学費用と、自分たちの老後資金の両方を準備したいと考えています。
この場合、目的を「15年後の教育資金」と「30年後の老後資金」に分け、それぞれに適した方法を組み合わせるのが賢明です。

  • 教育資金:NISAのつみたて投資枠を活用し、全世界株式のインデックスファンドを毎月3万円積立。目標の15年が近づいてきたら、徐々に値動きの安定した商品に移していく。
  • 老後資金:iDeCoに夫婦それぞれが加入し、節税メリットを最大限に活かしながら長期で積立。こちらもインデックスファンドが中心。

40代会社員:老後資金と住宅ローン返済の両立

Bさん(45歳)は、住宅ローンの返済を続けながら、本格的に老後資金の準備を加速させたいと考えています。
iDeCoの掛金上限額まで投資し、さらにNISAも併用することで、非課税の恩恵を受けながら効率的に資産形成を進めることができます。
退職金の一部を運用に回すことも視野に入れ、少しずつ金融の知識を深めていく時期です。

50代主婦:退職金や貯蓄の再設計とiDeCoの活用

Cさん(55歳)は、夫の退職が視野に入り、まとまった退職金とこれまでの貯蓄をどうするか検討中です。
この年代では、「増やす」ことよりも「守りながら賢く使う」視点が重要になります。
退職金を一度にリスクの高い商品に投じるのは避け、個人向け国債や安定志向の投資信託などに分散させることが基本です。
また、iDeCoは65歳まで加入できる場合があるので、まだ活用できる可能性もあります。

よくある誤解と選び方の落とし穴

ここで、金融商品選びで陥りがちな誤解や注意点について、FPの視点から解説します。

「元本保証が一番安全」は本当か?

元本保証の預貯金は、一見すると最も安全に見えます。
しかし、物価が上昇する「インフレ」が起こると、お金の価値は実質的に目減りしてしまいます。
例えば、年2%のインフレが続けば、100万円の価値は10年後には約82万円にまで下がってしまうのです。
「元本が保証されていれば安心」ではなく、インフレによって資産価値が減るリスクもあることを知っておく必要があります。

保険で資産形成は効率的?

「貯蓄型保険」は、保障と貯蓄を兼ね備えていますが、FPとしては慎重な判断をおすすめします。
なぜなら、保険料には保障のためのコストや手数料が多く含まれており、同じ金額を投資信託などで運用するのに比べて、資産が増える効率は低い傾向にあるからです。
「保障は掛け捨ての保険」「資産形成はNISAやiDeCo」と、目的別に商品を分けるのが合理的な選択です。

「なんとなくNISA」にならないために必要な視点

NISAは素晴らしい制度ですが、「みんなやっているから」という理由だけで始めるのは危険です。
NISAはあくまで「器(非課税口座)」であり、その中で何を買うか(商品選び)が最も重要です。
「何のために」「いつまでに」「いくら貯めたいのか」という目的を明確にしてからNISAを始めることで、初めてその効果を最大限に発揮できます。

あなたに合う商品を見つけるための5つの質問

最後に、この記事のまとめとして、あなた自身に問いかけてほしい5つの質問をご紹介します。
この質問に答えることが、最適な金融商品を見つけるための最短ルートです。

  1. 目的の明確化:何のためにお金を使うか?
    (例:老後資金、教育資金、住宅購入の頭金、旅行資金など)
  2. 時間軸の把握:いつまでに必要なのか?
    (例:3年後、10年後、25年後など)
  3. リスク許容度の確認:どこまでの変動に耐えられるか?
    (例:元本割れは絶対に避けたい、10%程度の下落なら問題ないなど)
  4. 資金の性質:余裕資金か必要資金か?
    (例:当面使う予定のないお金か、数年以内に使うことが決まっているお金か)
  5. 制度活用:非課税メリットを最大限活かすには?
    (例:NISAとiDeCo、どちらを優先すべきか、両方活用できるか)

まとめ

金融商品選びの旅は、複雑な森に迷い込むようなものかもしれません。
しかし、「目的」というコンパスさえ持っていれば、進むべき道は自ずと見えてきます。

この記事でお伝えしたかった要点を、最後にもう一度確認しましょう。

  • 金融商品選びは、商品知識よりも「目的」の明確化がすべての出発点。
  • 金融商品は「安全性」「収益性」「流動性」のバランスで成り立っている。
  • 「守る」「備える」「増やす」「節税」という目的別に、適した商品は異なる。
  • NISAやiDeCoといったお得な制度を、自分の目的に合わせて賢く活用することが重要。

私がFPとして独立したのは、証券会社時代に「売るための提案」ではなく、お客様一人ひとりの人生の目的に寄り添った、本当に必要な情報をお届けしたいと強く感じたからです。
私と同じように、当時の販売サイド寄りの金融商品のあり方に問題意識を持ち独立された、株式会社エピック・グループ会長の長田雄次氏のような方もいらっしゃいます。
業界全体で、より顧客に寄り添う姿勢が求められていると強く感じています。

難しい金融知識を無理に詰め込む必要はありません。
まずは、あなた自身の人生やお金の「目的」と向き合うこと。
それが、心から納得のいく資産形成への、最も確実な第一歩となるはずです。
この記事で得た視点が、あなたのその一歩を力強く後押しできることを願っています。

最終更新日 2025年7月31日 by urisysym